こちらをご覧下さい。これは、冷凍された体液のサンプルです。68年前、原爆に遭った人たちのもので、広島市の放影研=放射線影響研究所に保存されています。
「被爆者はモルモットか」といった批判も浴びてきた放影研ですが、福島の原発事故で注目される放射線のリスクの解明に向け、このサンプルをさらに活用するための議論が進んでいます。
放影研=放射線影響研究所は広島と長崎で60年余り調査し、被爆者にがんが多いことを突き止めてきました。
調査には、放射線量ごとに分類された被爆者の血液やリンパ液、病理標本などのサンプルが使われています。
おととい開かれたシンポジウムで、放影研は、被爆2世のものも含め「280万点以上」ものサンプルを保存していることを明らかにしました。
そして、低線量被ばくのリスクなど残された課題を解明するために、サンプルをデータベース化し、国内外の機関との共同研究に活用する方針を示しました。
(放影研 児玉和紀主席研究員)「色んな分野の知恵を集めて、包括的・総合的にアプローチをしていく必要があると考えています」
どの研究にサンプルの使用を認めるかは、放影研内部の委員会で審査します。シンポジウムでは、倫理的な配慮や透明性の確保といった課題が指摘されました。
(広島大学病院 山内雅弥さん)「放射線の健康被害の影響を調べることという、それは大前提でありますし、ひいては、やはり、被爆者の方の福祉につながるものでなければならないと」
(日本ジャーナリスト会議広島支部 難波健治さん)「共同研究をしたい方はたくさんいらっしゃると思います。これだけ貴重なデータがたくさんあるわけですから。それが本当に研究者の方に開かれているのかどうか」
「委員会のメンバーに市民や被爆者を入れるべきだ」という意見に対し、放影研は「前向きに検討したい」と応じました。
(日本被団協 坪井直代表委員)「研究はするけれども、治療の方は一切やってくれなかった。それは無理もないと、後は分かりだしたんです。そういう試料を活用することによって、原爆の全体像がつかめるように」
放影研はシンポジウムでの議論を踏まえ、サンプル活用についてのガイドラインをまとめる方針です。